今回は、水素結合(分子間力)と共有結合(化学結合)の違い についてまとめました。
多くの接着剤は、この水素結合のメカニズムで物体同士を接着させています。
接着方法とメカニズム
物と物とをくっつける方法は3つあります。
- 機械締結
- 化学結合
- 水素結合(分子間力)
各接着方法のイメージ図は以下になります。
結合強度は、機械締結 > 化学結合 > 水素結合(分子間力) になります。
機械締結
機械締結とは、機械的にくっつける方法です。
ボルト留めや、はめあい形状で、物理的に結合させる方法です。
物理的に結合をさせているため、結合強度はものすごく強く、ボルトを取り外すことで、簡単に締結を解くことができます。
化学結合
材料と材料を化学反応をさせ、化学的にくっつける方法です。
以下図を見ていただくとわかりやすいと思いますが、材質の異なる材料Aと材料Bが化学結合することで、材料Aとも材料Bとも異なる材料層が間に形成されます。
一度化学的に結合をさせると、強い接着強度を持つ一方で、材料を再び2つに分離する際には、化学結合を分離する処理が必要になります。
水素結合(分子間力)
多くの接着剤が水素結合を利用して接着させています。
材料Aがもつ水素原子と、材料Bがもつ酸素原子が引き付けあって接着します。
見た目上は、どうしてくっついているのかが分かりません。
水素結合が一番イメージしにくいかもしれません。
次のブロックで、実際に水素結合して接合させた事例を細かく説明します。
水素結合メカニズム
水素結合は、材料Aがもつ水素原子と、材料Bがもつ酸素原子が引き付けあって接着します。
以下具体例でご説明します。
- アクリル系接着剤(PMMA)とナイロン6樹脂(PA6)の水素結合
- ポリ酢酸ビニル系接着剤(PVAC)とナイロン6樹脂(PA6)の水素結合
アクリル系接着剤(PMMA)とナイロン6樹脂(PA6)
アクリル樹脂の側鎖の酸素と、ナイロン6樹脂の側鎖の水素が水素結合をします。
イメージ図で示すと以下のように水素結合をします。
ポリ酢酸ビニル系接着剤(PVAC)とナイロン6樹脂(PA6)
ポリ酢酸ビニルの側鎖の酸素と、ナイロン6樹脂の側鎖の水素が水素結合をします。
イメージ図で示すと以下のように水素結合をします。
水素結合をしない材料
ここまでお読みいただいて、おおよそ水素結合について理解いただけたかと思います。
しかし、すべての樹脂が水素結合をするかというと、そうではありません。
水素結合しない代表的な樹脂は以下の通りです。
- ポリプロピレン(PP樹脂)
- ポリスチレン樹脂(PS樹脂)
ポリプロピレン
ポリプロピレンの側鎖 CH3 や H などのアルキル基は、疏水基(親油基)と呼ばれ、極性を持ちません。
そのため、接着剤側の酸素と水素結合はしないため、ポリプロピレンには多くの接着剤がくっつかない理由はここにあります。
ポリスチレン
ポリスチレンの側鎖 ベンゼン環 も疏水基(親油基)と呼ばれ、極性を持ちません。
そのため、接着剤側の酸素と水素結合はしないため、ポリスチレンには多くの接着剤がくっつかない理由もポリプロピレンと同じです。
最後に
今回は、水素結合(分子間力)の例と共有結合(化学結合)との違い についてまとめました。
なぜ接着剤で物体同士がくっつくのか?その理由は水素結合にあります。
主に樹脂やゴム材料、材料リサイクルに関してわかりやすくまとめておりますので、皆さんのご参考になれば幸いです。
ゴムや樹脂材料でお困りなことがありましたら気軽にコメントいただければ、分かる範囲でご回答させていただきます。