ゴムの熱老化JIS試験〜加硫と老化原因の関係〜

ゴムの熱老化JIS試験〜加硫と老化原因の関係〜 樹脂 ゴム 材料
ゴムの熱老化JIS試験〜加硫と老化原因の関係〜

今回は、ゴムの熱老化JIS試験〜加硫と老化原因の関係〜 について書きたいと思います。

ゴム材料について

ゴム材料に求められる性能は以下のように様々あります。

  • 摩擦力・耐摩耗性
  • 動ばね性能・減衰性能
  • 硬さ性能・引張り性能(剛性・強度)
  • 環境性能(オゾン、耐熱)

摩擦力・耐摩耗性

自動車のタイヤには、自動車の動力を地面に伝えるための摩擦力が求められる一方で、長期的にタイヤを使うことのできる耐摩耗性が求められます。

ゴム材料の摩擦・耐摩耗性についてはこちらでまとめております。

動ばね性能・減衰性能

緩衝材としてのゴム材料は、入力を緩和されるための動ばね性能や減衰性能が求められます。

ゴム材料の動ばね・減衰性の関係は別の記事にまとめております。

硬さ性能・引張り性能(剛性・強度)

また基本的なゴム製品として性能を担保するには、ゴムの硬さ特性や引張特性などの一般的な特性が求められます。

また引張り試験をやらずともゴムの硬さから弾性率(ヤング率)が導き出せます。

環境性能(オゾン、耐熱)

外で使われるゴム部品であれば、耐オゾン劣化性や、耐熱老化特性が求められます。

今回の記事では、耐熱老化特性について書きたいと思います。

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ゴム材料 評価規格

ゴム材料には様々な特性が要求されます。

今回の記事にまとめた耐熱特性は、ゴム材料が熱によって大きく特性が変化する特性があるため、特に外で使用される製品にとっては非常に重要な試験になります。

一般的なゴム材料の評価規格について別の記事でまとめております。

ゴム材料 耐熱老化試験

ゴム材料は、温度環境下で特性が大きく変化します。

そのため製品の使用環境条件に則った適正な材料設計が求められます。

以下にゴム材料の耐熱老化試験条件について書きました。

試験条件

指定温度に保持されたチャンバー内にゴム試験片放置し、指定時間後にチャンバーからゴム試験片を取り出し、試験を行います。

試験条件詳細は以下です。

  • 規格:JIS K 6257 加硫ゴム及び熱可塑性ゴムー熱老化特性の求め方
  • 温度:80℃、100℃、120℃
  • 時間:24h、72h、168h、560h、1000h
  • 試験方法:硬度測定、引張り試験
  • 注意:状態調節のため、チャンバーから試験片取り出し後16時間放置

*状態調節を適切に行わないと、ゴム材料特有の影響でテスト結果が大きく変化します

試験結果

ゴムの耐熱老化試験の温度条件、老化時間によって、以下のゴム材料物性がどのように変化するのかをまとめました。

  • 硬さ変化
  • 引張り強度変化
  • 引張り破断伸び変化

硬さ変化

熱老化後の硬さ変化は以下のようになります。

いずれの温度条件において、熱老化時間が長くなることで、硬さ変化は大きくなります。

熱老化温度が高くなるほど、硬さ変化率は大きくなります。

ゴム材料_耐熱老化試験_硬さ変化
ゴム材料_耐熱老化試験_硬さ変化

引張り強度変化

熱老化後の引張り強度変化は以下のようになります。

いずれの温度条件において、熱老化時間が長くなることで、引張り強度変化率は大きくなります。

熱老化温度が高くなるほど、引張り強度変化率は大きくなります。

(引張り強度が大きく低下します)

ゴム材料_耐熱老化試験_引張強度変化
ゴム材料_耐熱老化試験_引張強度変化

引張り破断伸び変化

熱老化後の引張り破断伸び変化は以下のようになります。

いずれの温度条件において、熱老化時間が長くなることで、引張り破断伸び変化率は大きくなります。

熱老化温度が高くなるほど、引張り破断伸び変化率は大きくなります。

(引張り破断伸びが大きく低下します)

ゴム材料_耐熱老化試験_引張破断伸び変化
ゴム材料_耐熱老化試験_引張破断伸び変化

まとめ

上記の試験結果から、ゴムは熱老化により以下のように変化することがわかります。

  • 硬度は大きくなる
  • 引張り強度が低下する
  • 引張り破断伸びが低下する

つまり、製品の使われる温度条件によって、ゴムの特性は大きく変化します。

モーターなどの動力源や、バッテリーなどの蓄電システムの周辺では、非常に高温になることがわかっており、ゴムの使用環境に合わせた材料設計が重要であることがわかるかと思います。

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最後に

今回は、ゴムの熱老化JIS試験〜加硫と老化原因の関係〜 について書いてみました。

ゴムは柔軟性とショック吸収性を併せ持つ、他の材料にはない得意な性能を持つため、多くの製品に使われています。

一方で、温度条件でゴム特性は大きく変化するため、材料選定や材料設計には十分な検証が必要です。

主に樹脂やゴム材料、材料リサイクルに関してわかりやすくまとめておりますので、皆さんのご参考になれば幸いです。

ゴムや樹脂材料でお困りなことがありましたら気軽にコメントいただければ、分かる範囲でご回答させていただきます。

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