今回は、カーボンリサイクルCCUSの読み方と意味 について書きたいと思います。
CCUS・CCS 読み方
CCUSとは、Carbon Capture Utilization and Storageの略です。
CCS(Carbon Capture and Storage)と呼ばれることもあります。
(CCSはCO2回収から貯蔵までを指し、CCUSはCO2回収から貯蔵し有効利用するまでを指します)
CCUS・CCS 意味
CCUSは、工場や発電所などから排出される二酸化炭素(CO2)を回収し、地下へ貯留する技術、および貯蔵した大量のCO2から新たな物質を生成する技術のことです。(以下図)

日本ではカーボンニュートラル(CN)を実現するような技術や、過去に排出された大気中のCO2をも削減する「ビヨンド・ゼロ」を可能とするような革新的技術を、2050年までに確立することを目指しています。
特にCO2排出量を減らすカーボンネガティブ実現のためには、CCUSの実用化は必要不可欠です。
CCUSのバイオVerは、別記事にまとめております。
CCUS・CCS 流れ
空気中の二酸化炭素を回収し、貯蔵した大量の二酸化炭素(CO2)からどのように新たな精製物を作れるのか、以下の模式図でまとめました。

図を見ていただくと、CO2から多くの物質を生成できることがわかります。
CO2からの精製物は以下5つに分類することができます。
- メタン・燃料
- ガソリン・化学薬品
- ブタジエン
- ポリカーボネート
- 炭酸塩
メタン・燃料
大気中のCO2にH2を反応させることで、メタンCH4や燃料(ディーゼル)を生成させることができます。
メタンは、都市ガスに用いられている液化天然ガス(LNG)の主成分であるほか、水素やメタノールなどの製造原料として活用できます。

ガソリン・化学薬品
CO2はH2と反応させることで、上記のようなメタンCH4が生成できると共に、メタノールCH3OHも生成することができます。
メタノールはガソリンなどの燃料や、さまざまな化学薬品の原料であるエチレン・プロピレンを作るために使用されます。
このプロセスが出来上がることで、世の中にある大量のポリエチレンやポリプロピレンを半永久的にリサイクルし続けることが可能になります。

ブタジエン
CO2からはエタノールC2H5OHも精製することができます。
そしてエタノールからはブタジエンを作ることができます。
ブタジエンは、合成ゴム(SBR、NBR)や樹脂材料(ABS樹脂)の原料であり、本プロセスが構築できれば、世の中に存在する合成ゴムや、ABS樹脂などを原油の採掘なしに反駅旧的にリサイクルすることができます。

ポリカーボネート
CO2から炭酸ジメチル、DMC(液体燃料)を作るパスもあります。
そして最終的にはポリカーボネートを精製することができます。
CO2から透明樹脂を作り出すこともできます。

炭酸塩
最後は炭酸塩です。
CO2からアルカリ性洗剤の原料となる炭酸塩を作り出すことができます。

CCUS・CCS 課題
上記のようにCO2から多種類の材料を生成することが理論上可能です。
特に樹脂材料は、主に原油などの化石燃料から作り出しているため、新規化石燃料を使わずにCO2から新規樹脂材料を生成できることは非常に魅力的です。
ただし、エネルギーレベルの小さいCO2から、新たな物質を生成するためには、大量の水素が必要となります。
2022年現在、この大量の水素確保が大きな課題となっております。
最後に
今回は、カーボンリサイクルCCUSの読み方と意味 についてまとめました。
昨今、様々な国や、企業がCO2削減のために明確な目標を立て、取り組んでおります。
その目標達成のためには、CO2排出の少ない工場での製造プロセス改良が必要なものの、根本的にCO2の量を減らす技術はCCUSしかありません。
上記まとめた模式図で、どのようにCO2を再利用するのが最も賢いやり方なのかはこれから議論され、技術として確立していくと思います。
CCUSのバイオVerは、別記事にまとめております。
本記事が皆様のご参考になれば幸いです。
CCUSに限らず、材料の環境観点について様々な記事を書いております。
主に樹脂やゴム材料、材料リサイクルに関してわかりやすくまとめておりますので、皆さんのご参考になれば幸いです。
ゴムや樹脂材料でお困りなことがありましたら気軽にコメントいただければ、分かる範囲でご回答させていただきます。