ABS樹脂とAES樹脂の違い

ABS樹脂とAES樹脂の違い 樹脂 ゴム 材料
ABS樹脂とAES樹脂の違い

今回は、ABS樹脂とAES樹脂の違い について書きたいと思います。

ポリマーアロイとは

Polymer Alloy「ポリマーアロイ(アロイ樹脂)」とは、複数の高分子ポリマー(プラスチック)を混合し、改質したプラスチックのことを指します。

今回ご紹介するABS樹脂やAES樹脂は、まさしくアロイ樹脂で、複数の樹脂材料を混ぜ合わせることで、狙いとする材料物性を実現させたり、材料の物性バランスを整えることができます。

樹脂の複合材料の生産工程について別の記事にまとめております。

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ABS樹脂とは

ポリマーアロイの代表的な材料としてABS樹脂があります。

ABS樹脂とは、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(C)で構成された樹脂です。

ABS樹脂の優れる点

ABS樹脂の特徴は、機体的特性のバランスが非常に良いところです。

混ぜ合わせた材料がそれぞれ以下のような特徴があり、ABS樹脂は各材料の優れた特徴を合わせ持ちます。

  • アクリロニトリル 耐熱性、機械的強度(剛性)、耐油性に優れる
  • ブタジエン ゴムの特性である耐衝撃性に優れる
  • スチレン 光沢性、成形性(加工性)、電気的特性が良い

またABS樹脂は、非結晶材料であるため透明性にも優れております。

ABS樹脂の課題

ABS樹脂の課題は、耐候性に劣る点です。

ABS樹脂に含まれるブタジエンゴムがもつ二重結合が、熱や大気中のオゾンにより切断され、ラジカル反応し、容易に劣化が進みます。

そのため屋外での使用される製品で使われる場合は、部品表面を塗装してコーティングする必要があります。

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AES樹脂とは

AES樹脂とは、アクリロニトリル(A)、エチレンプロピレンゴム(E)、スチレン(C)で構成された樹脂です。

AES樹脂_化学式構造式
AES樹脂_化学式構造式

AES樹脂の優れる点

AES樹脂もABS樹脂と同様に、機械的特性のバランスが非常に良い材料です。

混ぜ合わせた材料がそれぞれ以下のような特徴があり、AES樹脂は各材料の優れた特徴を合わせ持ちます。

  • アクリロニトリル 耐熱性、機械的強度(剛性)、耐油性に優れる
  • エチレンプロピレンゴム 耐候性、耐薬品性、耐熱性に優れる
  • スチレン 光沢性、成形性(加工性)、電気的特性が良い

AES樹脂は、ABS樹脂とことなりブタジエンゴムを持たないため、耐候性に優れる材料になります。

AES樹脂の課題

AES樹脂の課題は、透明性です。

AES樹脂の透明性も悪くはないのですが、材料の透明性が、ブタジエンゴム>エチレンプロピレンゴム であるため、材料の色がABS樹脂と比較して若干乳白色で濁った色味になります。

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ASA樹脂とは

ASA樹脂とは、アクリロニトリル(A)、スチレン(C)、アクリレート(A)で構成された樹脂です。

ASA樹脂_化学式構造式
ASA樹脂_化学式構造式

ASA樹脂の優れる点

ASA樹脂もABS樹脂やAES樹脂と同様に、機械的特性のバランスが非常に良い材料です。

混ぜ合わせた材料がそれぞれ以下のような特徴があり、ASA樹脂は各材料の優れた特徴を合わせ持ちます。

  • アクリロニトリル 耐熱性、機械的強度(剛性)、耐油性に優れる
  • スチレン 光沢性、成形性(加工性)、電気的特性が良い
  • アクリレート 耐熱性、耐薬品性に優れる

ASA樹脂は、AES樹脂と同様にABS樹脂と異なりブタジエンゴムを持たないため、耐候性に優れる材料になります。

ASA樹脂の課題

ASA樹脂の課題は、コストです。

アクリレートは、AES樹脂のエチレンプロピレンや、ABS樹脂のブタジエンと比較して高価になります。

そのため、ABS樹脂、AES樹脂と比較してASA樹脂は高価になります。

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ABS樹脂・AES樹脂・ASA樹脂比較

各材料をまとめると以下表のようになります。

ABS樹脂AES樹脂ASA樹脂比較
ABS樹脂AES樹脂ASA樹脂比較

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ABS樹脂・AES樹脂選択基準

ABS樹脂、AES樹脂は機械的物性に優れているため、多くの部品に使われております。

そして両材料は性質が似ておりますが、明確な選定理由があります。

それは、耐候性の観点です。

ABS樹脂は、容易に耐候劣化することから、ABS樹脂製品には表面コーティングが必要です。

AES樹脂は、耐候劣化しないため、AES樹脂製品には表面コーティングは必要ありません。

ABS樹脂とAES樹脂の加飾オプションは以下の通りです。

ABS樹脂、AES樹脂の加飾方法

樹脂材料の加飾方法一覧については、別記事でまとめております。

ABS樹脂 加飾選択肢

ABS樹脂部品の加飾方法は、材料表面をコーティングが必要な方法のみになります。

そのため、塗装とフィルム加飾のみに限られます。

  • 塗装
  • フィルム加飾

AES樹脂 加飾選択肢

AES樹脂部品の加飾方法は、材料表面をコーティングが必要ありません。

そのため、塗装とフィルム加飾はもちろん、材料着色とMB(マスターバッチ)加飾も選択肢に入ってきます。

AES樹脂は材料着色加飾として用いられることが多く、CO2排出量の多い塗装工程を削減する目的で使われるケースが多いです。を使わないため、材料着色目的でAES樹脂を選択されるケースが多いです。

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最後に

今回は、ABS樹脂とAES樹脂の違いについて書いてみました。

最近ではABS樹脂は、3Dプリンタ向けに拡大してきております。

ABS樹脂が非常に機械的特性に優れているからであり、今後もますますABS樹脂の拡大が広がっていくことが考えられます。

ただし、屋外で長時間使用する場合は表面コーティングの必要がるということは覚えておいてください。

主に樹脂やゴム材料、材料リサイクルに関してわかりやすくまとめておりますので、皆さんのご参考になれば幸いです。

ゴムや樹脂材料でお困りなことがありましたら気軽にコメントいただければ、分かる範囲でご回答させていただきます。

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