今回は、 樹脂の分子量測定手法一覧まとめ について書きたいと思います。
樹脂がなぜ分子量分布を持つのか
樹脂材料の分子量分布を理解する上で、樹脂の重合工程を詳しく知る必要があります。
樹脂の重合工程では、低分子のモノマーと触媒を反応させて、高分子のポリマーを作ります。
重合工程の反応槽は非常に大きいため、反応槽の中で反応が進むモノマーと、反応が進みにくいモノマーが存在します。
(焼き肉屋で、七輪の中央は火力が強くて肉がすぐにやけるが、七輪の端では火力が弱く肉が焼けにくい といったイメージです)
つまり重合工程において、反応が進み分子量の大きなポリマーと、反応が進まず分子量の小さなポリマーが存在してしまいます。
そのため、樹脂材料には分子量の分布がどうしてもできてしまいます。
樹脂の重合工程については別の記事にまとめております。
分子量分布とは
樹脂は分子量の分布を持っており、同じ材料であっても分子量が異なることで、材料物性は大きく異なります。
特に樹脂材料は、熱と紫外線により、高分子鎖が切断され低分子鎖になっていき、それに伴い分子量分布は変化します。
分子量分布について詳細を別記事に書きましたのでご参考ください。
分子量測定 課題
分子量分布を測定するには専用の設備が必要です。
分子量分布測定設備は、樹脂材料開発メーカでは多数所有しております。
しかし、分子量分析設備は高額なため、樹脂材料を使って製品開発をする企業のほとんどは、この設備を所有しておりません。
そのため、分子量を測定する際には、外部の分析委託メーカに評価をお願いして実施する必要があります。
さらに言うと、分子量分析設備は多数種類があるため、各装置がどのように分子量を測定しているのか?分析委託メーカが提案する分析手法が最適なのか?
専門に分子量分析に携わっていない人からすると、わからないことが多々あります。
分子量測定 手法一覧
そこで、分子量分析手法を一覧にまとめました。
GPC
GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)は、溶媒に溶かした樹脂を穴の大きさの異なるカラムを通過させることで、分子鎖サイズの分類をすることができ、分子量分布を測定します。
SEC
SEC(Size Exclusion Chromatography:サイズ排除クロマトグラフィー)は、GPCと同じ測定方法です。
GPCは、サイズの異なる分子鎖を分類することで、サイズ排除クロマトグラフィーとも呼ばれています。
樹脂材料の分子量測定するために必要な前処理工程については、別の記事にまとめました。
FFF
FFF(Field Flow Fractionation:フィールド・フロー・フラクショネーション)は、分子鎖の長さによって、電磁場,重力場,流動場を分子鎖が移動する速度が異なる性質を利用して分子量分布を測定する方法です。
GPC(SEC)のカラムではサイズ分離が難しい、イオン性高分子、凝集タンパク質、ナノ粒子の分子量分布測定が可能です。
電気泳動
電気泳動(Electrophoresis)は、電極を持たせた分子鎖の移動距離で分子量分布を測定する方法です。
分子鎖が短いほど、電荷の影響を受けにくく、測定器内を早く移動することができ、分子鎖が短いほど電荷の影響を受け移動距離が短くなります。
流体力学的クロマトグラフィー
流体力学的クロマトグラフィー(Hydrodynamic Chromatography)は、樹脂を投入する管内の異なる流速(層流:管内の各層の流れの速度)が、分子鎖サイズによって、分子の移動速度に影響することを利用して分子量分布を測定する方法です。
MTF
MTF(Molecular Topology Fractionation)は、カラム内に充填した溶媒(材料)との絡み合い効果で分子量を測定する方法です。
分子鎖が短いと絡み合いが少なく、分子鎖が長い(あるいは側鎖が多い)と絡み合いが多いと言う性質を利用して分子量分布を測定します。
TREF
TREF(昇温要離分別法:Temperature Rising Elution Fractionation)は、分子鎖の結晶化速度差で分子量を測定します。
分子鎖が短いほど結晶化は素早く進み(結晶化速度が速い)、分子鎖が長い(あるいは側鎖が多い)と結晶化は緩やかに進みます(結晶化速度が遅い)。
この結晶化速度の違いにより、分子量分布を測定します。
最後に
今回は、 樹脂の分子量測定手法一覧まとめ について書いてみました。
樹脂の分子量測定方法は多数あり、ネット上に整理されていなかったため、一覧表にまとめてみました。
樹脂材料は様々な材料を混ぜ合わせた複合材料として使われます。
そのため樹脂材料の分子量測定工程において、単一樹脂材料まで分解する前処理工程が必要です。
樹脂分子量測定の前処理工程については、こちらの記事でわかりやすくまとめております。
主に樹脂やゴム材料、材料リサイクルに関してわかりやすくまとめておりますので、皆さんのご参考になれば幸いです。
ゴムや樹脂材料でお困りなことがありましたら気軽にコメントいただければ、分かる範囲でご回答させていただきます。