今回は、鉄リサイクル方法の現状と課題 について書きたいと思います。
環境問題
昨今、環境問題が大きく取り上げられるようになりました。
特に自動車産業において、ガソリン車はガソリンを燃焼したエネルギーを使って動力を得ます。
そのためガソリン車は二酸化炭素を排出しながら走行することになり、環境に悪影響のある乗り物という認識が広まっております。
一方で電気自動車は、電気をエネルギーとして動力を得ます。
そのため電気自動車は二酸化炭素を排出することはなく、環境に良い乗り物であるという認識がされております。
環境に悪影響のある製品を作り続ける会社は、消費者や投資家から支援されなくなり、会社の利益が得難い環境になってきております。
そんな背景があり、多くの自動車メーカーがガソリン車の開発から電気自動車の開発へ方向転換をするようになりました。
自動車リサイクル
自動車開発が、ガソリン車から電気自動車へシフトすると同時に、廃車となった自動車のリサイクルも環境保護に重要です。
今までは、廃車となった自動車は、焼却や埋め立てにより処理されてきました。
廃車の処理は、日本では焼却されることが多く、アメリカでは埋め立てされることが多いです。
しかし、昨今の環境意識の高まりにより、使える部品や素材はリサイクルして再活用する流れになってきております。
アルミ
アルミのリサイクルは進んでおります。
アルミのリサイクル技術は確立されているため、回収されたアルミは再生材として再利用されます。
飲料のアルミ缶が代表的ですが、アルミ100%のアルミ缶は、ゴミ箱から回収されほぼ100%リサイクルされています。
ただしアルミ100%ではない、自動車のようなさまざまな素材で構成された製品からアルミを個別に取り出してのリサイクルはさほどできていません。
製品からアルミのみを取り出す作業工数を考えると、リサイクルしたアルミの価格が高くなります。
そのため、経済合理性の観点からリサイクル技術はあるものの、製品からの解体・アルミの回収まで伴うアルミのリサイクルはさほど進んではおりません。
アルミ リサイクルの現状と課題については、別の記事でまとめております。
銅
銅は、リサイクル技術は確立されております。
そのため、回収したリサイクル銅を溶解して、再利用することは可能です。
しかし銅は、回収と分解に課題があり、リサイクル率はそれほど高くはありません。
銅が使われる製品のほとんどが、電線に代表される導線になります。
そのため、導線を回収し、導線を覆っている被覆樹脂を剥がし、さまざまな材料で構成される導線から銅のみを分別する必要があります。
導線の回収と分解に手間がかかるため、銅のリサイクル技術は確立してるものの、リサイクル率はそれほど高くはありません。
銅のリサイクルに関して、別の記事でまとめております。
樹脂材料
一方で樹脂材料のリサイクルは全く進んでおりません。
自動車には大量の樹脂材料が使われており、かつ種類も豊富であるため、1つ1つ分別することが困難です。
労力をかけて、各樹脂材料ごとに分類したとしても、ほとんどの樹脂材料の重量が1kgに満たないため、リサイクルする旨味がほとんどありません。
そのため、自動車メーカが樹脂材料のリサイクルに取り組んではいるものの、経済合理性が成り立た血ません。
その結果、樹脂材料のリサイクルはほとんどされておりません。
樹脂のリサイクル手法については、別の記事でまとめております。
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鉄の特徴
鉄の特徴は4つあります。
- 高剛性・高強度
- 錆
- 安価
- 多用途
高剛性・高強度
鉄には炭素などさまざまな元素が含まれており、硬く、強度の高い材料です。
アルミなどその他金属と比較して高剛性で高強度であるため、建築や機械用途で広く使われます。
錆
鉄は、空気や水に長時間触れ続けると酸化して、錆(酸化鉄)が発生します。
錆が発生すると強度が大きく低下するため、表面処理などして表面を覆い空気と水と直接触れるのを防がないといけません。
安価
鉄は、他の素材と比較して非常に安価です。
鉄は幅広くさまざまな領域に使われており、大量生産によるコストダウン効果も大きいです。
多用途
炭素などの元素の含有量の制御や熱処理などの加工処理によって、多様な用途に対応することができます。
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鉄は何に使われている
鉄は以下用途に幅広く用いられます。
- 建築
- 輸送用機械(自動車・鉄道)
- 産業機械
鉄は上記の中でも、建築と輸送用機械に最も使用されます。(鉄素材の約70%)
建築用では、ビルや橋などに大量の鉄が使われます。
輸送用機械では、自動車や電車のボディに大量の鉄が使われます。
鉄 リサイクル方法
鉄も他の素材と同様に、リサイクルが求められております。
鉄のリサイクル全体像は以下になります。
鉄のリサイクル方法は3つあります。
- 電気炉
- 高炉・転炉
- 鋳造
電気炉
鉄スクラップを電気炉で高温溶解し、板を作るリサイクル方法です。
電気炉は、高炉と比較して、エネルギー消費量がものすごく小さいです。
そのため、電気炉で鉄スクラップをリサイクルする手法は、環境保護観点から最もよく使われます。
リサイクルされた鉄板は、建設や自動車に使われます。
①電気炉でのリサイクル方法は以下になります。
鉄スクラップを電気炉で溶融し、クロムやニッケル等の添加剤で目的用途に合った物性になるよう合金化して調整します。
その後、鋳造、圧延し、鉄製品を作ります。
高炉・転炉
鉄スクラップを高炉・転炉で溶解したのちに、鋳造によって鉄製品を作るリサイクル方法です。
リサイクルされた鉄製品は、自動車用途に使われます。
②高炉・転炉でのリサイクル鉄の作り方の流れは以下になります。
鉄スクラップ100%では製品の性能が安定しないため、鉄スクラップに新材(鉄鉱石から高炉製)を混ぜてリサイクルするのが一般的です。
鉄スクラップと新材を混ぜ合わせたものを転炉製鋼、精錬、鋳造、圧延して鉄製品を作ります。
鋳造
鉄スクラップを鋳造した鉄製品を作るリサイクル方法です。
リサイクルされた鉄製品は、自動車や建機用途に使われます。
③鋳造の作り方の流れは以下になります。
リサイクルの流れはシンプルです。
鉄スクラップを溶解し、金型に注湯して鉄製品を作ります。
鉄スクラップの鉄の純度によって、作れる鉄製品の種類が限られます。
(不純物が多く混ざり、鉄の純度が低いと、低品質の製品しか作れません)
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最後に
今回は、鉄リサイクル方法の現状と課題 について書いてみました。
昨今の環境意識の高まりにより、多くの素材のリサイクル技術開発が進み、ビジネススキームも構築されました。
鉄のリサイクル技術は構築されているため、製品から適切な鉄を回収できればリサイクルすることは容易です。
その他リサイクルについて、別の記事にまとめておりますので、ご参考ください。
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