今回は、ゴムの老化防止剤(WAX)の成分と異なるブルームの使い分け ついてまとめました。
ゴムのオゾン劣化
ゴム材料は大気中のオゾンと触れることで容易に劣化が進みます。
ゴムのオゾン劣化メカニズムについて、別記事でまとめております。
そこで必要になってくるのが、ゴムをオゾン劣化から守る「老化防止剤」と「WAX」です。
老化防止剤について、別記事で分かりやすくまとめました。
老化防止剤(WAX)とは
老化防止剤(WAX)とは、ゴム表面をコーティングしてオゾンから守る役割をします。
ゴム表面にWAXの保護膜を形成させることで、物理的にオゾンがゴムに接触することを防ぎ、ゴムのオゾン劣化を防止します。
ゴム材料に添加したWAXは、熱をかけることで、ゴム内からゴム外へ析出します。
それによりゴム全体をWAXの保護膜で覆うことができます。
以下がイメージ図になります。

ゴムに添加したWAXが、大気中の熱によって、ゴム内から析出してゴム表面にWAXの保護膜を形成します。
これにより、オゾン(O3)がゴムに直接触れることがなくなり、ゴムのオゾン劣化を防止できます。
WAXの役割について、別記事に詳細をまとめました。
老化防止剤(WAX) 選び方
WAXの種類は、大きく分けて2つあります。
- パラフィンワックス
- マイクロワックス
各WAXの特徴は以下の通りです。

パラフィンワックス
パラフィンは分子量が小さいため、融点は低くなります。
融点の低いことや分子量が小さいことで、ブルーム速度(WAXが部品表面に移行する速度)が早くなります。
製品表面をできるだけ早くWAXで保護する目的で使われます。

マイクロワックス
マイクロワックスは、パラフィンワックスと比較して分子量が大きく、融点は高くなります。
融点が高く分子量が大きいため、ブルーム速度は遅くなります。
製品を長期的にWAXで保護する目的で使われます。

老化防止剤(WAX)の使い分け
製品によって、オゾンにさらされる条件は異なるため、製品仕様に合ったWAX仕様を考えなければなりません。
室内のみで使用が想定される製品においては、それほどオゾン劣化の心配はなく、WAXの仕様や添加量にこだわる必要がないかもしれません。
一方で、室外で使われる製品は常にオゾン環境下に置かれるため、WAXの使用検討は十分にされなければなりません。
一般的にゴム材料向けには、上記パラフィンワックスとマイクロワックスを混ぜ合わせて使われることが多くです。
(最適な配合比のWAX選定が必要です)
老化防止剤(WAX) 特徴(ブルーム量・移行量性)
WAXの大きな特性は以下2つあります。
- ブルーム量
- 移行性(移行量・ブルーム性)
図で表すと、ブルーム量・移行量と温度の関係は以下になります。

ブルーム量
ブルーム量とは、ゴム材料に添加したWAXが熱の影響により、ゴム内部からゴム表面へ析出してくるWAXの量のことを指します。
ブルーム量が多いほど、ゴム材料を覆うWAXの膜が厚くなることを意味しており、ブルーム量が多いほど、耐オゾン性に優れます。
WAXのブルーム量は温度上昇に伴って、ゴム中から外への析出量は増えていくものの、ある温度以降WAXは外からゴム中へ移行する特徴を持っています。
ブルーム量の変曲点は、WAXの融点-20℃と言われています。

移行性(移行量・ブルーム性)
移行性とは、ゴム材料に添加したWAXが熱の影響により、WAXがゴム内部からゴム表面へ析出してくるスピードを指します。
移行性が大きいほど、ゴム材料を覆うWAXを形成するまでのスピードが早くなることを意味しており、移行性が大きいほど、初期の耐オゾン性に優れます。
WAXの移行性は、温度上昇に伴って移行しやすくなる特徴があります。

最後に
今回は、ゴムの老化防止剤(WAX)の成分と異なるブルームの使い分け ついてまとめました。
WAXは奥が深く、またさまざまなWAXが各社から販売されているため、仮説を持って色々と検証されてみるのがいいのかと思います。
WAXの基礎的な内容については、別記事にもまとめております。
ゴムや樹脂材料でお困りなことがありましたら気軽にコメントいただければ、分かる範囲でご回答させていただきます。